昭和アーケードとアジアン熱気が交錯する「ディープ大阪」の最前線――空き店舗の若手起業と多文化共生が紡ぐ2026年のリアル

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昭和アーケードとアジアン熱気が交錯する「ディープ大阪」の最前線――空き店舗の若手起業と多文化共生が紡ぐ2026年のリアル
昭和アーケードとアジアン熱気が交錯する「ディープ大阪」の最前線――空き店舗の若手起業と多文化共生が紡ぐ2026年のリアル
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今里 商店 街は、近鉄今里駅から生野区・東成区の境界付近へと伸びる、大阪下町の歴史と生活感が凝縮されたアーケード街だ。朝8時。ガラガラとシャッターが上がる音とともに、出汁の香りと揚げ物の匂いが漂い出す。高度経済成長期、近隣の町工場で働く労働者やその家族で溢れかえっていたこの通りも、時代の波とともに高齢化と空き店舗の増加という厳しい現実に直面してきた。しかし2026年現在、この古き良きアーケードにこれまでと異なる種類の熱気が満ち始めている。

昭和レトロな喫茶店の店頭で豆乳を仕込んでいた70代の店主は、すれ違う外国人留学生に手を振って「おはよう」と声をかける。「10年前は人通りもまばらで、このまま消えていくんかと誰もが思っていた。でも、若者や多国籍な店が増えたおかげで、今の今里 商店 街は昔とは違う種類の活気に満ちているよ」。衰退を辿る地方商店街の典型例と思われた場所で、一体何が起きているのか。現地を取材した。

昭和の面影を残すアーケードに押し寄せる「Z世代の起業ラッシュ」

商店街を歩くと、築50年を超える木造店舗の横に、コンクリート打ちっぱなしのモダンなコーヒースタンドやクラフトビールバーが並んでいることに気づく。シャッターが閉まったまま放置されていた「負の遺産」を、Z世代やミレニアル世代の若手クリエイターたちが次々とリノベーションしているのだ。

2024年秋にオープンしたスパイスカレー店のオーナー(28)は、かつて時計店だった店舗をDIYで改装した。「大阪市内の主要エリアに比べて家賃が圧倒的に安い。しかも、地元のアーケード特有のあたたかみがある。ただおしゃれなカフェを作るのではなく、商店街のおじいちゃん、おばあちゃんがフラッと入ってきて世間話ができるような場所を目指しました」と語る。レトロな街並みとミッドセンチュリーのインテリアが同居する空間は、SNS世代の若者だけでなく、散歩途中の高齢者たちの憩いの場にもなっている。

キムチの酸味とバインミーのパクチー香る「カオスな食文化」の最前線

今里の真骨頂は、その底知れぬ多様性にある。近隣の生野コリアンタウンからの文化的な地続き感に加え、近年はベトナムやネパール、中国出身の住人が急増。それに伴い、食のランドスケープが劇的な変化を遂げた。

大衆食堂の隣で炭火を熾すのは、ベトナム出身の女性が営むバインミー専門店だ。自家製のフランスパンにレバーペーストと甘酸っぱいなます、そしてたっぷりのパクチーを挟む。そのすぐ向かいでは、創業60年のコロッケ店が香ばしい油の音を立てている。「最初は匂いや言語の違いで戸惑いもあった。でも、旨いもんを作って誠実に商売している仲間だと分かれば、言葉の壁なんて関係ない」と近所の精肉店主は笑う。和食、韓国料理、エスニックが渾然一体となった独自のグルメゾーンが形成されつつある。

シャッター通りを救ったリノベーション物件と家賃の「現実的リアリズム」

なぜ今、このエリアが注目を集めるのか。その背景には極めて現実的な経済的要因が存在する。心斎橋や難波といった大阪中心部の地価高騰に伴い、店舗の維持コストは年々上昇。個人の独立開業を目指す若者にとって、ミナミの繁華街はハードルが高すぎる存在となった。

対して、この地はアクセスの良さに反して家賃水準が極めて手頃だ。さらに地元の不動産業者やNPO法人が主導し、所有者と起業家を結びつける「空き店舗マッチング事業」が功を奏している。老朽化した耐震性や設備面での課題はあるものの、DIY利用を容認する柔軟な契約形態が増えたことで、若い挑戦者たちの実験場として機能しているのだ。

2025年万博後のインバウンド流入が変えた「ディープ大阪」の立ち位置

2025年の大阪・関西万博を経て、訪日外国人の観光スタイルは劇的に変化した。金太郎飴のような観光地巡りから脱却し、ローカルな住民の日常に触れる「ディープ体験」を求める旅行者が急増。その波が、このアーケードにもダイレクトに押し寄せている。

かつては地元住民専用のライフラインだった銭湯や角打ち(酒屋の店頭飲み)に、バックパックを背負った外国人が当たり前のように姿を見せる。案内板の多言語化や決済手段のデジタル対応は急ピッチで進んだが、街全体が持つ「生の大阪の日常」は損なわれていない。観光地化されすぎていない素顔の魅力が、目の肥えた海外旅行者を惹きつけてやまない理由だ。

過疎化と高齢化を乗り越える「多文化共生型コミュニティ」の実験

もちろん、課題がすべて解決したわけではない。高齢化に伴う後継者不足や、老朽化したアーケード全体の修繕費用問題、騒音やゴミ出しを巡る文化的な摩擦など、足元には課題が山積している。

それでも、地元の振興組合や新旧の店主たちは対話を重ねている。定期的に開催されるナイトマーケットや防災訓練には、日本人住民だけでなく外国籍の店主たちも積極的に参加。多様なバックグラウンドを持つ人々が同じ街の構成員として助け合う仕組みづくりが、少しずつ形になりつつある。「単なる観光地化でもなく、衰退の一途をたどるのでもない。第三の道を探っている最中だ」と振興組合の幹部は気を引き締める。

歩いて感じた熱気――現地取材で見えた未来への課題と希望

日暮れ時、提灯に明かりが灯ると、仕事帰りの会社員や買い出しの主婦、下校途中の高校生、そして旅行者が同じアーケードを行き交う。鉄板で肉を焼く煙と、夕暮れの風。そこには、都市の合理性や均一化に抗うような、力強い生命力が脈打っていた。

時代の変容を受け入れながら、自らの根底にある泥臭さを手放さない。変化を恐れずに多様な人々を飲み込んで進化を続けるこのアーケードの姿は、衰退に悩む全国の商店街にとって大きなヒントを含んでいる。路地裏から漂う香ばしい匂いに誘われながら、この街の挑戦はこれからが本番なのだと感じた。 (出典: 今里 商店 街(Yahoo!ニュース)